震災から5年後、宮城県漁協の牡蠣養殖場がASC認証取得の喜びに沸く
7月 13, 2017
11|04|2016
津波により壊滅的被害を受けた東日本大震災からちょうど5年後、宮城県漁協志津川支所は震災以前よりしっかりとそして大きなステップを進みました。
2016年3月30日、宮城県漁協の志津川支所戸倉事務所は、日本初のASC認証を取得した養殖場となりました。日本に本社を置く認証評価機関であるアミタ株式会社が、ASC二枚貝基準に基づき独立した審査を行い、このたび自然環境と社会に対し責任ある運営を行っている証としてASC認証の取得に至りました。
認定された戸倉の養殖場は、宮城県北東部の志津川湾(南三陸町)のちょうど南半分に位置します。戸倉海域における養殖は1899年に遡り、これまでの間、幾度もの津波に耐えてきました。しかしながら、2011年3月の東日本大震災に続く大津波では、沿岸の漁業および養殖業の施設のほとんどが破壊されました。
宮城県漁協志津川支所運営委員長の佐々木俊雄氏はASC宛の文書の中で、「ASC認証を取得でき非常に嬉しく思います。我々宮城県漁協組合員は、津波で養殖施設だけではなく、家や家族、友人をも失いました。幸いにも津波を生き残った家族や子どもたちのおかげで、再び漁業を始める希望が生まれました。」と述べています。
震災以前、カキ養殖を行う組合員は狭い範囲に多数のカキ筏を設置し、結果として過密で環境負荷の高い養殖となっていたそうです。復興は責任あるカキ養殖を始める良いきっかけとなりました。そこで彼らはWWFジャパンと力を合わせ、豊かで安定した養殖生産の基盤を形成するために、生産に伴う負荷を毎年3分の1に減らすなど、より良い生産を通じて海底環境を回復させることとしました。養殖場および生産手法を効率よく管理運営するために、宮城県では各生産者は共同組合を作られています。
漁協は3年間の国による補助事業に参加してきました。補助事業の終了時に、失われやすい生態系が回復を促す責任ある新たな養殖運営に従い、彼ら自身が養殖場を管理することが求められました。
「我々の仕事場は海です。震災後、仕事で海に再び出るのは容易ではありませんでした。もちろん全員が再開できたわけではありません。年配の組合員は漁業を引退しました」と佐々木氏は言います。
「継続を決めた組合員は、未来に向けた養殖のあり方について多くの話し合いを重ねました。私たちは子どもたちに残せる養殖業をしていくために、持続可能な漁場を作っていこうと決めました。そして私たちは養殖施設を震災前の3分の1に減らし、カキの品質を上げました。以前は収穫まで3年かかりましたが、今では1年で収穫できます。」
佐々木氏はまた「ASC認証の取得にあたり、WWFジャパンには大変お世話になりました。ASC認証は我々がずっと思い描いてきた願いが叶ったものであり、認証取得にあたりお世話になったすべての方々に感謝を申し上げます」と言います。
ASC基準・認証担当の堀井晴子は「宮城県における今回の認証取得は、水産業の復興のひとつの好例となります。彼らは単に養殖業を再建するのではなく、改善することへとつなげました。日本における最初の認証養殖場がこのような地域から誕生したことを非常に嬉しく思います。またASC認証が彼らにとって付加価値となり、今後の希望をもたらすことを確信しています。」と述べています。
宮城県漁協志津川支所戸倉カキ部会長の後藤清広氏のコメントを含む認証取得養殖場の映像はこちら。