ASCがキー・データ・エレメント・プロジェクトでエビ養殖におけるデジタル・トレーサビリティの新境地へ
6月 13, 2023
水産養殖管理協議会(ASC)認証済みのエビ製品を対象とする、サプライチェーン・トレーサビリティ(追跡可能性)のデジタル化が、ASCのキー・データ・エレメント(KDE)プロジェクトにより現実のものとなりました。テクノロジーを活用して製品の商流の可視性を向上させることで、小売業者は養殖の産地とサプライチェーンのデータの透明性を高め、より厳格なプログラムを実現できます。
この画期的なプロジェクトでは、ASC認証の養殖場や飼料供給元から加工、梱包、小売への輸送まで、主要なデータをデジタルに取り込み伝達するソフトウェアを開発しました。製品が動くにつれ、サプライチェーンに沿って企業から次の企業へ、固有コードを介しデータがデジタルに伝達されます。
目標達成に向けて、ASCはサプライチェーンの企業パートナー、利害関係者、さらには水産物トレーサビリティ世界基準(GDST)など大規模な水産物トレーサビリティを推進する団体と緊密に連携し、プロジェクトの整合性を確保し、目的と成果の共有を保証してきました。
「私たちは、KDEプロジェクトによるエビ養殖への取り組みを皮切りに、世界の水産物養殖産業におけるデジタル・トレーサビリティ(追跡可能性)の先駆者になったことを非常に嬉しく思っています。ASC認証ラベル付きエビ製品がサプライチェーンを移動する際の整合性と保証を高められるよう、ASCは継続的に努力を重ねており、KDEプロジェクトはその大きな部分を占めています。データをデジタルに送信することで、サプライチェーン全体の透明性とトレーサビリティ(追跡可能性)が確保されるだけでなく、他の価値ある製品情報を最終購入者に届ける機能も果たせます。このツールにより、サプライチェーンの全段階で、購入製品の供給源に関するより良い理解が得られます。また、将来的には、このツールがいかに顧客に付加価値をもたらすことができるかについても検討していきます」と、ASCのCEOであるクリス・ニネス(Chris Ninnes)は述べています。
多様なデータをデジタルに把握する
魚種の学名、魚のサイズと数、親魚の供給元、養殖方法、原産国と養殖場の所在地、移動および輸送関連文書、飼料原料の供給元と認証状況、加工業者のタイプ、冷凍日、販売関連書類など、プロジェクトに関連するキー・データ・エレメントが収集されます。これらのデータによりトレーサビリティ(追跡可能性)が生まれ、最終的には、プロジェクト全体の完成度が高まり、プログラム保証が確実なもとのなります。
また、孵化場の名前と放流データを含めることにより収穫前に追跡と検証を開始することができ、この点がASCと他のスキームとの違いとなっています。
このプロジェクトではすでに広範なデータベースが構築されており、さらなる展開に伴い、取り込まれる要素のリストは強化されていくことでしょう。
英国の小売業セインズベリーズ(Sainsbury’s)とそのサプライヤー、ライオンズ・シーフーズ(Lyons Seafoods Ltd)は、KDEプロジェクトの初期段階におけるチャンピオンとなりました。二社はASCと密接に協力し、サプライチェーンから得られた貴重なフィードバックを提供することで、プロジェクトの継続的改善に役立てています。
「セインズベリーズは、責任ある調達方針の基盤として、最新かつ最高に堅牢なトレーサビリティ(追跡可能性)システムを確実に導入しながら、サプライヤーと共にASCのKDEプロジェクトを検証しています。こうして水産物サプライチェーンのデジタル化をお手伝いすることができ、嬉しく思っています。このプロジェクトは、水産物への信頼性を高め、100%信頼できる魚を求めるお客様の期待に応える支えとなってくれるばかりか、『あなたに優しく、地球に優しく、みんなに優しく』という当社の構想と完全に趣旨が一致しています」と、セインズベリーズの水産物養殖・漁業部門の責任者であるデーブ・パーカー氏(Dave Parker)は述べています。
「ライオンズ・シーフーズは、当社の製品がASC基準の認証を受けることに誇りを持って取り組んでいます。私たちは、本基準が世界的に最も厳しい養殖場のサステナビリティに関する認証であることを認識しており、おかげで自信を持って、責任を持って調達された養殖エビをお客様に提供することが可能になりました。トレーサビリティ(追跡可能性)と透明性へのコミットメントの一環で、KDEチャンピオンとしてASCと提携できたことを喜んでいます。当社はASCの業界最先端のデジタルトレーサビリティ(追跡可能性)プラットフォームを採用して、サプライチェーンと協力し、養殖場から小売店までのサプライチェーンを下流から可視化しました」とラベイリー・ファインフーズ/ライオンズ(Labeyrie Fine Foods / Lyons)のサステナビリティ責任者、エステル・ブレナン氏(Estelle Brennan)は述べています。
「このプロジェクトの成功には、サプライチェーンの各段階におけるパートナーの存在が不可欠で、私たちはサポート役として密接に協力してきました。加工業者や小売業者から寄せられた肯定的なフィードバックは非常に心強いもので、サプライチェーンへの信頼を獲得し、お客様にエビ製品の完全性について透明性のある安心感を提供するために、私たちが果たせる役割を実証するものです」と、ASCのテクニカル・オペレーション部門シニア・ディレクターのアリー・ディングウォール(Ally Dingwall)は語っています。
ASCのプログラム保証と完全性における継続的な改善
KDEプロジェクトの初期段階では、ベトナムのエビ養殖に焦点を置いていました。ASC認証ラベルを自社のエビ製品に貼って販売しているベトナムとインドの企業の大半が、KDEプロジェクトに現在参画を果たし、バングラデシュで展開が始まりました。製品は世界中に輸出されており、最も主要な購入国はオランダ、フランス、スイス、ドイツです。ヨーロッパの他の多くの国でも販売されており、取引は、カナダ、シンガポール、米国、日本、オーストラリア、香港などに及んでいます。
このプロジェクトは、トレーサビリティ(追跡可能性)と完全性の強化を支援する他の取り組みと連携するもので、ASCは現在、養殖場管理ソフトウェアなどのツールを使った試験運用を計画しています。
相互運用性は、より広範にわたるプロジェクトを成功させるために極めて重要で、ASCでは、プロトコルに関してパートナーやNGOと協力することで、さまざまなソフトウェアプロバイダとプラットフォーム間のデータ交換を容易にする相互運用可能なシステムの実現を目指しています。
ASC認証済みエビ製品の完全なトレーサビリティ(追跡可能性)の達成は、長い道のりの始まりにすぎません。プロジェクトにさらに魚種や地理的位置を追加していく形で次のステップに進むことがすでに検討されています。