
フウセイを育てる中国初の「スマート養殖船」がASC認証を取得
2022年12月、中国の養殖船「国信1号」が、スズキ目ニベ科の海産魚であるフウセイ (Larimichthys croceus) の養殖場として初めて水産養殖管理協議会 (ASC) 認証を取得しました。同船は、年間3,700トンのフウセイを生産できる世界初の本格的な「スマート養殖船」です。中国の高級スーパーマーケット「Ole’」は、中国の消費者向けにASC認証のフウセイを宣伝し調達するための協議を開始しました。
フウセイのASC認証は、「熱帯魚類のASC基準」に基づいています。この基準には、生態系と生物多様性の保護、抗生物質使用の厳格な管理、農薬や化学物質の使用削減、効率的な資源・エネルギー管理システムの導入、責任ある飼料調達の推進、地域社会や社会的責任への強い関心など、150以上の審査指標があります。

フウセイは中国で祝い膳として重宝される魚種の一種で、祝祭日にもよく食卓にのぼります。また、中国の食文化における歴史も古く、紀元前400年にまでさかのぼる記録が古文書に残されています。現在、年間約18万トンのフウセイが消費されているため、地元中国市場における重要性を考慮して、国信1号は他の魚種よりもフウセイの養殖を優先させました。
「スマートシップ」で実現する養殖事業
国信1号を所有するのは、閉鎖循環式養殖のパイオニアである、青島国信ブルーシリコンバレー開発有限公司です。国信1号には、広大なスペースに先進的なデジタル管理システムが組み込まれ、生育条件となる環境がきめ細かく制御されています。

この養殖船は最大100海里の沖合を航行することが可能で、フウセイの成長に合わせて航路における海水温を細かく調整しています。高度な気象観測システムにより、嵐や台風などの自然災害のリスクを回避します。また、海流を再現するために、いけすに水を循環させ水流を形成して、自然環境を模倣しています。 さらに、フウセイは騒音に対して比較的強いストレス反応を示すため、船内に高度な騒音低減技術を導入して成長を最適化しています。船内では水槽内の酸素供給が強化されており、AI照明や、水の洗浄と廃棄物の除去を監視・管理する技術なども導入されています。
審査員は、「熱帯魚類基準」に照らして、船舶内における養殖の全過程を調査、検証し、法的要件や規則の遵守から環境および社会的パフォーマンス、魚の健康やバイオセキュリティに関する側面まで、その内容を確認しました。さらに、水質への影響に関する規制や許可要項を、国信1号がどこまで遵守しているか、法的要件に従って審査されました。たとえば、国信1号には、死亡魚の自動抽出や汚れの除去などの重要な設備があります。
「青島国信ブルーシリコンバレー開発有限公司は、持続可能なフウセイ養殖に向けた多大な努力を行っており、史上初のスマート養殖船認証取得は、その努力を反映したものです。国信1号の管理と運営に携わるすべての人々の責任ある養殖への取り組みと、革新的な養殖および技術への献身的な努力を称えたいと思います」とASCのCEOであるクリス・ニネスは述べました。
揺るぎない責任ある養殖水産物の基準を達成するために
同船に投資した青島国信集団の董韶光(とう・しょうこう)副総経理は、次のように述べました。「ASC認証は、水産養殖業の持続可能な開発のためのゴールドスタンダードです。ASC認証は、持続可能性を重視する世界各国の消費者が認知する格付けであるばかりか、中国でも、高級スーパーマーケットや上級ホテルチェーンの大半が、持続可能な水産物を調達基準として採用しています。
国信1号はASCの基準への準拠に重点を置いて、産業界の高度な技術によってフウセイの野生生育環境を船内で模擬し、人工環境でフウセイを養殖します。養殖船国信1号のフウセイがASC認証を取得したことは、持続的発展という分野における中国の水産養殖業と市場の実践と目標が、国際社会の合意方向と一致することを証明するものです。今後、国信グループは、ASCの養殖プロジェクトとより密接に協力していきます。」
国信1号は2022年5月に正式に操業を開始し、その後すぐにASCの基準を満たすための養殖システムの改良を開始しました。