マングローブ林のもたらす恩恵は広く知られるようになったものの、その保護活動においては、ある程度の成果しか出ていません。今回、先駆的な新型基金設立により、これまでにないアプローチがとられることになりました。過去数十年に及んだ貴重な動植物生息地の破壊を反転する試みとして、マングローブ林保護を条件としてエクアドルの地域コミュニティに経済的インセンティブが提供されます。

沿岸生息地管理基金(Coastal Habitat Stewardship Fund)を設立したのは、世界の水産養殖認証プログラムをリードする水産養殖管理協議会 (ASC) 、国際的非営利団体であるコンサベーション・インターナショナル、および、エクアドル政府の環境・水資源・生態系保全移行省です。養殖認証スキームオーナーとして前例のないこの取り組みは、認証手続きを補完しつつ、それと平行してASCが展開する環境プロジェクトへの取り組みにおいて新たな1ページを刻むものとなります。

ソシオ・マングラーという名の下、エクアドル政府は保全インセンティブ・プログラムを実施し、マングローブの健全性を高める地元グループの活動を財政支援しながら、基金の稼働状況を監督していきます。地元の関連機関は、マングローブ生息地の保護および維持に向けた「持続可能な利用および管理協定」に自発的に関わる見返りとして、6か月ごとに経済的インセンティブを受け取るとともに、マングローブ生息地へのアクセスが許可されます。現在までに、37,000ヘクタール以上のマングローブ林がソシオ・マングラー・インセンティブ協定でカバーされています。3つの行政地区に広がる26の地元組織が投資計画を管理し、4,000人がこのプログラムから直接、恩恵を受けています。

 

 

複合的な脅威

マングローブ林は、大気から炭素を隔離し、海岸侵食を防ぎ、無数の動植物に生息地を提供します。こうしたメリットがあり、また、認識が高まっているにもかかわらず、過去30年間、地球上で100万ヘクタール以上のマングローブ林が破壊され、そのうち約3万ヘクタールが中央アメリカで失われました。[1]

マングローブは、人類の多様な活動や産業がもたらす脅威に直面しているのです。その中で最もよく知られているのは、おそらく、エビ養殖のための森林伐採でしょう。しかし、それ以外の活動も同様に深刻です。例えば、マングローブは燃料や建設資材として利用されますし、また、ホテル開発やその他の観光目的でマングローブ林が開墾されることがあります。そのような事象によって、ずっと昔からマングローブに依存して生計を立ててきたコミュニティが、さらに社会の周辺へと追いやられることが、一度ならず、あることでしょう。

[1]国際連合食糧農業機関「グローバル森林資源アセスメント2020」http://www.fao.org/documents/card/en/c/ca9825en

多くの場合、地域コミュニティに残された経済的選択肢が欠如している事が根本的な原因であり、この新基金はまさに、この点に取り組もうとしています。沿岸生息地管理基金は、ソシオ・マングラーの運営を無期限に支援することを目的に、さらなる資金調達が見込める信託として設立されました。

エクアドルのマングローブ林には、エビ養殖場をはじめとする多くの動物、コミュニティ、生計手段が存在します。

プロジェクトの第一弾

ASC の最高経営責任者(CEO)である クリス・ニネスは次のように述べています。「ASCは、森林破壊を禁じるという厳格なエビ養殖基準を課すことで、マングローブ林の保護に長年尽力してきました。」

「ブルー・カーボン・エコシステムを保護し、それを拠り所とする地域社会を支援できるような方法で、責任を持って、エビ養殖業が行われる。それが確実に実施されるよう、我々は注力しているのです。環境的に社会的に責任を負う養殖水産物に関する先駆的な認証プログラムとして、私たちは現在、養殖場認証を補完する領域へと職務を拡大しており、この基金は、私たちが実行を約束する数多くのプロジェクトの1つ目となります。」

コンサベーション・インターナショナル・エクアドルの副社長兼事務局長のルイス・スアレスは、次のように述べています。「私たちは、民間部門、地域コミュニティ、国家当局、環境団体を繋ぐ革新的なパートナーシップを通じて、より大きな影響を及ぼせると信じています。沿岸生息地管理基金は、養殖セクターからの支援を得ることで、保全インセンティブ・プログラムの財政的持続可能性を高められる、革新的な財政機構です。」

環境省の社会林業プログラム責任者、ナンシー・セラデは、次のように述べています。「ソシオ・マングラーは、自然保護を人の幸福と組み合わせたプログラムです。2014年の設立以来、マングローブの保護と修復にさまざまな恩恵をもたらし、マングローブを頼りに生計を立てているコミュニティにとって持続可能な生産的開発を促進してきました。」

マングローブの根は動物の避難場所となり、海岸の浸食を防ぎます。

環境および社会経済的な影響

沿岸生息地管理基金は、環境と社会経済の両方に影響を与えることを目的とした、インセンティブベースのプログラムです。マングローブ林の重要性について、地元の人々を啓蒙する努力が世界中で行われていますが、地元住民に収入を得る代替手段がなければ、その地域は経済的必要性を満たすことができません。マングローブ林の保護および維持を目的としたソシオ・マングラーの「持続可能な利用および保護協定」に自発的に取り組む見返りとして、地元住民は毎年の報酬を得るとともに、森林へのアクセスが得られます。ASCが提供する基金は、計画の拡充と、その継続的な実行可能性の確保に向けて利用されます。

成熟したマングローブ林は、復元された森林域よりはるかに効果的な炭素吸収源となるという研究結果が出ており、これは、世界が気候変動と戦う際に、特に関連してきます。こうした地域が開発により失われないようにするため、プロジェクトの最初のフェーズでは、手つかずのマングローブ生息地保護に重点を置くことになります。時間とともに基金が拡充すれば、破壊された生息地の修復を支援する復元作業に重点が置かれることになります。

このプログラムでは、地元住民のため、そして、土壌と沿岸水域での養殖業を含む様々な業種のために、マングローブ林を保護する重要性についての知識およびリソースを用意しています。現在、エクアドルには30カ所のASC認証済みエビ養殖場があり、全ての養殖場が認証を得る条件として地域の生態系保護に取り組んでいます。

温室効果ガス排出量の把握

エビの養殖のみがマングローブ林の消失原因ではありませんが、劣悪な養殖慣行は、森林を消耗させる一因となり得るのです。1999年以降に設定された「ASCエビ養殖基準」では、養殖場設置計画によりマングローブが破壊された場合、認証の取得が差し止められます。場合によっては、認証の条件として、1999年より前に操業していた養殖場には、すでに破壊された森林の再植林が要求されることもあります。 ちなみに、ASCは、世界に残されているマングローブを保護するために、養殖場の基準改善を超えた活動を行う唯一の認証制度です。

クリス・ニネスは次のように続けています。「こうしたプロジェクトへの私たちの当初の継続的な取り組みがきっかけで、ASCと関わりのある他の企業が、この作業で私たちを支援してくれるようになることを心から願っています。私たち皆が気候変動の影響を是正するという集合的な課題に直面する中、ASCは、養殖に携わるすべての人がこの役割を担えるように、さらなるイニシアチブの開発に取り組んでいます。だからこそ、私たちは、セクター毎の温室効果ガス排出量を計算するツールを数多く開発して、カーボンニュートラルに必要な活動の規模と緩和策をよりよく理解できるようにしているのです。このうち最初のツールは、今年後半に試験的に導入されます。」 以上のとおり、私たちは一丸となり、より多くのマングローブ生息地を支援できるよう、引き続き、資金増額に向けて努力していきます。

 

 

 

 

掲載日
木曜日, 29 7月 2021
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