Rosieの物語
ロージー・カーティスのストーリー
マクリーンズ・ノーズのサケ養殖場は、英国でもこの上なく人里離れたスコットランドの西海岸に位置します。西を見渡せば、海の向こうにはヘブリディーズ諸島、そして、その向こうには、カナダの東海岸にまで届く海洋が何千キロにもわたって広がっています。
その養殖場がある、アードナマーハンにたどり着くには、最寄りの町から長距離運転が必要ですが、少なくとも、退屈はしません。この地域に高速道路はなく、英国でも最も岩だらけとされるこの地方には、曲がりくねった道だけが続いています。たれこめる霧に覆われた丘と、絶え間なく波の打ち寄せる海岸の間に、絵のように美しい白い家が点在する緑色の平原。景色を楽しむだけでも十分に旅をする価値のある場所です。
養殖場マネージャーのロージー・カーティスが、自身の仕事と地域社会に夢中なのも不思議ではありません。サケ養殖場の経営は多忙な仕事ですが、これはロージーが背負うたったひとつの責務ではありません。さまざまな役目を担うロージーは、地元消防署の司令官でもあり、アードナマーハンのような人里離れた半島では特に重要な職務である、沿岸警備隊の副官も務めています。それだけでは十分ではないかのように、ロージーは家族と共に小さな農場も経営し、ハイランド牛と羊の群れの世話をしています。幸いなことに、信頼できる牧羊犬、マーズが農場の仕事に関しては助けになってくれています。
マクリーンズ・ノーズ養殖場で働くメンバーのうち、地域社会を重視する人は、ロージーだけではありません。同僚の2人は消防士仲間で、他の2人は沿岸警備隊の隊員です。アードナマーハンのような小さな農村地域では、ロージーやその同僚のような献身的な人々がいなければ、こうした重要な役職は成し遂げられません。また逆に、彼女たちも雇用主の全面的な支援がなくては、仕事を続けられません。軽い気持ちでは引き受けられない職務です。沿岸警備隊や消防隊の要請を必要とする事態は、いつ発生するか予測することはできませんし、発生すれば、ロージーや同僚はただちに現場に向かわなくてはならないのです。自分や同僚がこんな形で地域社会に貢献できるようモウイが手配してくれたことを、ロージーは有難く感じています。ロージーの地域に根差した精神が、チームの他のメンバーにも浸透していることは明らかです。
ですが、ロージーは日常の仕事であるサケ養殖にも同様の情熱を注いでいます。彼女は多くの時間を費やして、魚の健康と福祉を確実に守っています。その傍らで、彼女が信頼するチームは、食べ残した飼料が蓄積されて環境に悪影響が出ないように飼料の量を監視するなど、注意深く、魚の監視を行っています。
ロージーは、アードナマーハン半島西部のキルホーンで育ち、その後、この地域を離れましたが、1997年に父親が病気になったために帰郷し、ここに留まって、父から残された家族経営の養殖場を引き継ぐことにしました。しかし、多くの人が帰郷しないため、247人というすでに人口の少ないこの地域の居住者も高齢化に直面しています。ロージーは、水産養殖が小さな農村社会の将来を改善する道になってくれることを期待しています。
「地方の農村地域で魚の養殖を行うことにより、将来的に、人々がこの地域に戻ってきて、地域社会が存続できるようになることを願っています。」
地域社会への関与は、責任ある水産養殖の重要な要素です。水産養殖場は、ASC認証を取得すれば、最高の環境基準を順守するだけでなく、社会的に責任を負うことにもなります。ここには、良き隣人となることも含まれます。地域社会は、近くの養殖場のASC認証の可能性に関して、意見を述べるように求められることさえあります。
ASCでは、水産養殖の可能性を最大限に引き出すことを目的としており、これには、増大する世界人口を養うという重大なニーズに対応すること、さらには、多くの社会的および経済的メリットをもたらすことが含まれています。もちろん、養殖が責任を持って行われず、環境や社会に悪影響を与えるのであれば、こうしたメリットには意味がありません。業界が今後どのような方向に向かって行ってもらいたいか、ロージーは明確に述べています。
「2、3年のうちに、サケ業界全体がASCの認定を受けられればと思っています。」
ASC認証には厳格な要件がありますが、だからこそより一層の価値があると、ロージーは捉えています。
「取得の困難な認証書だからこそ、誇りを持って提示できます。」 「すでに誇りに思うことが沢山ある者にとっては、認証書ほど意義深いものはありません!」