バングラデシュの改善プログラム

バングラデシュのサトキラ地区は、世界最大のマングローブ林が広がる場所であり、偉大なガンジス川、ブラフマプトラ川、メグナ川の合流によって形成された広大な河川デルタ、スンダルバンスの端に位置しています。この湿地帯は、世界でも重要なエビの生産地域の一つです。

この地域の水産養殖業を代表するのは、シンプルで低強度の養殖方法を使用する家族経営の養殖場です。こうした「小規模」養殖場がバングラデシュのエビ生産の大部分を占め、地域経済に大いに寄与しています。

モハムドの家族はサトキラでブラックタイガーエビの養殖業を営んでいます。モハムドにとってエビ養殖は生活の一部です。

「父は昔からエビを養殖していました。私は彼から学び、将来は息子も私のようにエビを養殖することを願っています」。

しかしながら、このようなシンプルな養殖方法には限界があります。

小規模養殖場は、責任ある養殖の実践実践をより広い市場に示すために必要なシステムや管理体制が整っていないことが多いために、ASC認証の厳格な要求は、一般的に財政的および技術的に彼らの手が届く範囲を超えています。

ASCは、こうした養殖場に対処するために、「ASCによる改善プログラム（IP by AIP）」を立ち上げました。このプログラムは、養殖改善プロジェクト（AIP）を通じて改善に必要なフレームワークと技術サポートを提供することを目的とし、最小規模の養殖場でも利用できるようにしたものです。

課題

モハムドの小規模かつ低強度なアプローチは、非常に高品質のエビを生み出し、利益の上がる輸出市場の顧客にとって大きな魅力を持っています。

そのような顧客の一人が、ヘイコ・レンク氏です。ヨーロッパへのエビ輸入に携わるヘイコは、サキトラ地区における養殖業改善における可能性を認識していました。

「インド国境付近の西ベンガル地域は、広範囲なエビの養殖に最適です。同地域の養殖場では、1平方メートルあたりエビが1～2匹しかいないため、極めて自然でオーガニックであり、餌（加工飼料）が与えられていません。そのため、エビは自然に成長します」。

しかし、問題に直面しました。モハムドのような養殖場が生産するエビの品質が優れていることはわかっていましたが、それらを輸出するためには、養殖に使用される方法についてより厳格な保証を顧客に提供する必要があったのです。

解決策：ASCの改善プログラム

ヘイコにとって、ASCの「改善プログラム」が解決策であることがすぐに明らかになりました。2023年、Luna Seafoods（同氏と関係のある地元のエビ加工業者）をパートナーに迎え、最初のグループとして125の養殖場がバングラデシュ初のASC養殖改善プロジェクト（AIP）に参加しました。

AIPに参加することで、パートナーと養殖場経営者は、養殖場で実施された改善の恩恵を共有します。ヘイコは顧客が求める保証を提供し、モハムドは必要な技術サポートを受けることで、エビのより広い市場にアクセスし、より良い養殖方法を実施することで利益を得ています。モハムドにとって、そのサポートは画期的なものでした。

「AIPに参加する前は、土地の事務関係には注意を払わず、記録管理も実施していませんでした。しかし今では、すべての事務作業と記録管理を行っています」。

「AIPで、多くのトレーニングを受けました。土壌や水を調べるための先進技術や設備の使い方を学び……多くのものを得ました」。

AIPの典型的な構造は、各養殖場固有の要件に応じて合わせた最大3年間の改善計画です。ASCのトレーニングを受けた実施者と検証者が独立した技術的専門知識を提供し、各改善の節目ごとに進捗を検証することで、利害関係者に完全な透明性を提供します。

ASCのアジア地域AIPマネージャーであるプラ・ドゥアンチャイは、バングラデシュでその効果を直接体験しています。

「エビ養殖はバングラデシュの経済にとって非常に重要ですが、改善が必要な領域がたくさんあります。ASCの改善プログラムは、養殖業者が実践方法を改善し、国際市場の要求に応える手助けをする方法です」。