
水産業の未来を支える女性の挑戦 – 築地加代子さん
3月 24, 2025
日本の水産養殖業において、ASC認証を取得した生産者やサプライヤーと共に働く女性の活躍が注目されています。今回は、そのような現場で日々奮闘する株式会社九州築地の代表取締役、築地加代子さんに、お仕事の流れややりがい、課題についてお話を伺いました。
1.一日の業務の流れ
築地さんの1日は、早朝4時30分の出社から始まります。まず現場を確認した後、メールチェックや返信対応を行います。時には関連部署とのやり取りや書類作成に時間を要し、9〜10時頃までかかることもあります。その後は、得意先や専門家の先生、技術者の方々との打ち合わせが続きます。各養殖場を訪問するのは月に1〜2回程度で、業務を終えるのは午後3〜4時ごろ。早朝からのハードワークですが、その分、多くの関係者と協力しながら水産業を支えている実感があるといいます。
2. ASC・CoC認証取得の喜び
ASC認証水産物の取り扱いやサステナビリティへの取り組みの中で、築地さんが特にやりがいを感じるのは、生産者と共に努力し、その成果を実感できたときです。ASC・CoC認証の取得に向けた取り組みでは、大学の先生方や地元銀行の役員、ホテル関係者など、多くの方々の賛同を得ながら進めてきました。その支えがあったからこそ、最終的に認証を取得できたときの喜びはひとしおだったと語ります。
また、信頼できる養殖業者と協力しながらASC認証取得をサポートし、持続可能な方法で育てた魚が高く評価されたり、新たな取引先から声がかかったりする瞬間にも、大きな達成感を感じるとのことです。さらに、サステナブルな取り組みが社内の士気向上につながり、社員が「こういう魚を扱うことで、私たちの会社が選ばれるんだ」と実感しながら働ける環境を築けたときにも、強いやりがいを感じるそうです。
3. 直面する課題とその解決策
ASC認証水産物の取り扱いにおいて、築地さんは国内での認知度の低さを課題として挙げます。市場の理解を深め、流通を拡大し、消費者の意識を変えることが求められていますが、大手企業と比べて資金的な制約があるため、取り組みのスピードが遅くなることに歯がゆさを感じるといいます。しかし、生産者の想いやこだわりを発信し、それを言語化・共有していくことで、偶然の発見や新たな出会いにつながる可能性もあると希望を持っています。
また、日本国内では、自国の海の環境問題への関心がまだ低いことも課題の一つです。そこで、環境問題に関心のある企業(エコバッグブランドやオーガニック食品店など)とのタイアップや、消費者が参加できるキャンペーンを実施することが重要だと考えています。例えば、「ASC認証魚を食べるとXX%を環境保護活動に寄付」といった仕組みを取り入れることで、消費者の意識向上を図ることができるでしょう。
さらに、学校や教育機関との連携を強化し、小学生向けに「サステナブルな水産業」について学ぶ機会を提供したり、大学の学食でASC認証魚を使用した食育イベントを開催したりすることで、未来の消費者に「選ぶ価値」を伝えていきたいと考えています。
4. 未来への展望
築地さんの取り組みは、単なるビジネスの枠を超え、社会全体の意識を変える可能性を秘めています。持続可能な水産業の発展には、多くの人々の理解と協力が必要です。彼女のような現場での努力が、ASC認証の価値を広め、未来の海と食卓を守る大きな力となることでしょう。
水産養殖業に携わる女性たちの活躍が、これからも業界の発展とサステナビリティの推進に貢献していくことを期待しています。